今さら恋なんて…



「お。いいじゃねぇか、それ。買うのか?」

いつの間に電話を切ったのか、シゲハルはあたしの手元をひょっこり覗きながら、笑顔でそう訊いた。


「え?…み、見てただけだよ」

あたしは慌てて我に返ってカットソーを投げる様に棚に戻した。


「そうなのか?似合うと思うけど…」

シゲハルはそう呟いて、あたしが投げたボルドーカラーのカットソーを取り、あたしの体に当てた。


「うん。似合う。いい女だ」


「……」

照れもせず、そんなセリフを吐かれて、あたしの方が照れてしまった…。


「何、照れてんだよ」


「うるさい」


「可愛いから、コレ買ってやる」


「は?い、いいよ。悪いし」


「何言ってんだよ」


「だって…」


「プレゼントしてやるから着ろ。んで…」


「!…ま、まさか“脱がせるために買ってやる”とか言うんじゃ…」


「よく分かってんじゃん」


「!こ、この昭和男!」




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