今さら恋なんて…



「……」


声を掛けられずに、戸惑っていると、

「よぉ、つー。お疲れさん」

って、手を挙げるシゲハル。


そして、道路を突っ切ってあたしの前までやってくる。


「な、何で…?」


消え入りそうな声で訊くと、

「自分の女、迎えに来ちゃいけないのか?」

って、シゲハルはくわえタバコで笑った。


ドキッ…


思わずきゅん、とする胸。


「…こんなことで赤くなってんな。可愛いな、お前」

シゲハルは、すっ、とあたしの頬を撫でる。


「……」


ドキドキが収まらない。


こんな些細な言葉と仕草なのに…。



< 206 / 479 >

この作品をシェア

pagetop