今さら恋なんて…
淡いグレーのスーツを着こなした彼は、
「改めて自己紹介させていただきます。私、弁護士の斉藤と申します」
と呟きながら、革の名刺入れから取り出した名刺を渡してくれた。
「ありがとうございます…」
受け取った名刺を思わずじっと眺めていると、
「本日はお時間作っていただいてありがとうございます。…それに何度もお電話差し上げて申し訳ありませんでした。しかし…とても大切な話でしたので…」
って、あたしを落ち着かせる様にそう言ってくれた。
「…あ、いえ…」
あたしがとっさに首を振ったところで、注文したアイスコーヒーが運ばれてきた。
「お待たせ致しました」
ウェイトレスが去って行った後、斉藤さんは自分の傍らにあったホットコーヒーを飲んだ。
あたしもそれに釣られる様にコーヒーを飲む。
苦みが緊張とともに喉を通り抜けて、思わず吐息が漏れた。