今さら恋なんて…
「…どうぞ…」
斉藤さんにハンカチを差し出されて…初めて自分が泣いているのに気付いた。
「…すみま…せん…」
きちんとアイロンが掛けられたハンカチを受け取ると、あたしは頬を伝う涙をそっと押さえる。
「…大丈夫ですか?」
「…はい…」
「場所…私の事務所にした方がよかったですね…」
斉藤さんは少し店内の様子を伺う様にした後、そう呟いた。
「…かも、しれません…」
あたしはまだ震える手で髪を掻き上げながら、そう返した。
「…佐々木社長が…貴女は“強い人だから待ち合わせは喫茶店で大丈夫”なんて言っていたので、ここにしてしまいましたが…私には…貴女はそんなに強い人には見えません…。佐々木社長は貴女の強がりに気付いていなかったようですね」
斉藤さんはそう言って苦笑いを浮かべると、
「場所、変えましょうか…。まだ大切な話がたくさん残っていますから…」
と囁く様に言うと、あたしを促して喫茶店を後にした…。