今さら恋なんて…
(高級ホテルだってのは知ってたけど…ここまでとはねー。あいつもイイ男捕まえたねー。つーか、あたし、ここ来たことあったっけ…?…何か見覚えあるような…うーん…)
あたしはピンヒールの足を進めながら、そんなことをぼんやり考える。
今日は後輩の結婚式がこのシーフォトで行われるのだ。
こんな高級ホテルで挙式と披露宴、なんて…かなり贅沢だわ。
エレベーターで会場に向かうと、クロークを発見する。
「いらっしゃいませ。お荷物をお預かり致します」
そこに控えていたフロントマンはそうあたしに言ってくれた。
「はい。お願いします」
あたしはコートを脱ぐと、彼に預けた。
落ち着いたグレーのジャケットの胸には、“Front Clerk 遊川(ユカワ)”と書かれた名札が付いていた。