今さら恋なんて…
「はい。…だから、せめてハグ、しません?」
龍哉は意地悪く笑いながら、軽く両手を広げる。
「……」
これは作戦…?
あたしを変にドキドキさせる作戦?
それにまんまと引っかかろうとしてるの?あたし…。
だけど…
「分かった…」
あたしは体を龍哉の方に向け、その首にしがみつく様に腕を伸ばした。
その首元から、あたしの使っているボディーソープの残り香がして…“龍哉、ウチのお風呂使ったんだったよね”なんて、何だか…余計にドキドキした…。
「昨日は酔っ払ってたから、もっとぎゅっ、ってしがみついてくれましたね」
あたしの背中に腕を回しながら、龍哉はそんなことを呟く。
「え?…全然覚えてない」
「いいですよ。可愛かったですから」
「……」
やめてよ。
そうやってムダにドキドキさせるの…。
「…また連絡します。じゃぁ…」
龍哉は最後にぎゅっ、と強めにあたしをハグすると、ゆっくりあたしを解放して、車を降り、ホテルの中に入っていった…。