今さら恋なんて…



「はい。…だから、せめてハグ、しません?」

龍哉は意地悪く笑いながら、軽く両手を広げる。


「……」


これは作戦…?

あたしを変にドキドキさせる作戦?


それにまんまと引っかかろうとしてるの?あたし…。


だけど…

「分かった…」

あたしは体を龍哉の方に向け、その首にしがみつく様に腕を伸ばした。


その首元から、あたしの使っているボディーソープの残り香がして…“龍哉、ウチのお風呂使ったんだったよね”なんて、何だか…余計にドキドキした…。


「昨日は酔っ払ってたから、もっとぎゅっ、ってしがみついてくれましたね」

あたしの背中に腕を回しながら、龍哉はそんなことを呟く。


「え?…全然覚えてない」


「いいですよ。可愛かったですから」


「……」


やめてよ。

そうやってムダにドキドキさせるの…。


「…また連絡します。じゃぁ…」

龍哉は最後にぎゅっ、と強めにあたしをハグすると、ゆっくりあたしを解放して、車を降り、ホテルの中に入っていった…。



< 350 / 479 >

この作品をシェア

pagetop