今さら恋なんて…



「…司さん…」

あたしの肩が震えているのに気付いた龍哉がそっと人混みからあたしを救い出してくれる。


「……歩けますか?ちょっとこっちに…」

周りの人に気付かれない様にあたしを気遣いながら龍哉は会場を出て行く。


あたしはこみ上げてくる涙が止められなくて、ひたすら龍哉にしがみつき、彼の誘導に従って歩みを進めた。


人混みを離れた、と思った時、目の前に扉が現れ、龍哉に連れられるまま、その扉をくぐった。


パタン…


静かな音を立てて閉まるドア。


薄暗いその部屋で、

「…もう、大丈夫ですよ」

って、龍哉は呟いて、あたしをゆっくり抱きしめた。


「……」

あったかい腕と、龍哉の匂いに包まれて、あたしはすごく安心出来て…思わずその背中にしがみついた。



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