ゆとり社長を教育せよ。
「危ない危ないって、一体なにが――」
そう尋ねた瞬間、手の中からスマホが消えた。
そして同時に誰かから、ぽんと肩を叩かれる。
「――美也ちゃん、久しぶり」
「ち、かげ……さん?」
――ヤバい。本能がそう察知して、彼から一歩後ずさる。
そんな私をみて不気味にニコッと微笑んだ千影さんは、私の手から奪ったスマホの画面に触れて、電話を勝手に切ってしまったようだった。
乱暴されそうになったあの夜から一度も会っていなかったのに、どうして今私の前に……?
「彼氏と別れたんだってね。だから、美也ちゃんが寂しがってるかと思って」
「どうして、千影さんがそのこと……」
――まさか。
ふと浮かんだいやな予感。それを確かめるべく、私は口を開く。
「充を危ない目に遭わせたのは、あなた……?」
「……正解。それにしても、美也ちゃんに睨まれるのって悪くないね」
「ふざけないで! じゃあ、今までの変な電話も全部……」
「電話? ……それは知らないよ。僕じゃない」
うそ……。じゃあ、電話を掛けてきた相手は他に居るってこと?
「そんなに怖がらないでよ。こんな所で立ち話もナンだし、僕の家へ行こう」
「家……? お断りします」
「大丈夫。美也ちゃんの家のすぐ近くだから」
家が近く……? そんなはずはない。
まだ千影さんが普通の人だと思っていた頃に、住んでる場所は聞いたことがあるもの。