ゆとり社長を教育せよ。


亜紀ちゃんのやったのはカッターの件と、それから無自覚で、私が合コンで出会った千景さんとうまくいってないみたいだと、凜々子さんに何気なく話したことがあるらしい。

そのせいで私や充が危ない目に遭ったと知ってかなり罪悪感を感じていたみたいだけど、凜々子さんの策略なんて見抜けたはずもないし、カッターの件は脅されてやったことだし。

彼女を咎めることはできない。

……ずっと気になっていた、常務との不倫もやめたみたいだしね。


謝罪の済んだ亜紀ちゃんと入れ替わるように、今度は会長が椅子から立ち上がって、私の元に近付いてきた。

充とは似ても似つかない威厳のある顔立ちに、圧倒的なオーラ。

会長と直接話すのは、充の秘書になることを頼まれて以来だし、そうでなくても存在感がものすごくて、緊張で背筋が伸びる。


「――高梨さん。事情は息子と、それからこちらの新田さんに聞きました。この度は、息子が至らないばっかりに、危険なことに巻き込まれてしまったようで本当に申し訳ない。父親の私から、深くお詫び申し上げます」


わわ……会長に頭を下げられてしまった!


「いえ、あの。私がなんともなかったのは、社長に助けてもらったおかげですから……!」


慌てて顔の前で手を振りつつ、この人から、なんであんな軽い息子が生まれたのかしら? なんて不思議に思ってしまうくらい、真逆な親子。


「……親父。彼女困ってんじゃん。いいんだってもうそこまで謝んなくて」

「馬鹿者! 元はといえば、お前が仕事をまじめにやらずに秘書たちをコロコロと変えたせいでここまで話がこじれたんだろう!」

「反省してるし、今はちゃんとやってるよ。美也のことはこれからも一生俺が守るし、それで問題ないでしょ?」

「なに!? お前はこのお嬢さんを嫁にもらうつもりなのか! そうかそうか、それなら安心だ。彼女によく鍛えてもらうんだぞ」

「はいはい」


……ちょっと待って。当事者を差し置いて、なんかすごく重要な話してない?

ヨメがどうとかって、私、そんな話知りませんけど!


できればもうちょっとその話題を掘り下げて欲しい、という私の願いもむなしく、加地親子の話題はまたシリアスな方向へと戻った。


それは、凜々子さんへの処分をどうするか――。

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