ゆとり社長を教育せよ。





「……社長。いい加減教えてください。新商品の中身」

「ん。いーよ。はいコレ」


会議後の社長室で、私はその役員大絶賛だったという商品の企画書を見せてもらった。

一体どれだけ凝ったチョコレートなんだろう……と、ワクワクしながらそれに目を通す。


「商品名……“男のチョコバー”……ですか」


なんか、単純なネーミング。

男性向け商品ってことかな?


「とにかくこだわったのは重量感。美也とチョコ食べ尽くしデートしたときに思ったんだけど、俺、甘党だからあれだけ食べてもまだ余裕って感じだったんだよね。
ほら、今人気のチョコって結構上品系じゃん? だから、なんとなく物足りなかったのかなーと思ってさ」


充がそう言って椅子から立ち上がり、私の手にある企画書を後ろから覗く。


「……なるほど。でもコレすごいですね。一本食べただけでその日のカロリーオーバーな感じ」

「それくらいやらないとインパクトないし」


へええ……充のくせに、ちゃんと考えてやってるんじゃない。感心感心。

でも……でもでもでも。

ひとつだけ、気になることが。


「この商品名に……なんとなくイカガワシイ響きを感じるのは私だけでしょうかね」

「……あー。なんとなくわかるけど。でもさ、それって美也が欲求不満だから余計そう思うんじゃない?」


最後の方だけ、わざと声を潜めて耳元に唇を寄せた充。

そんなわけないでしょ! ……と、否定したいところだけど、そんなわけあるのだ。

女にだって性欲はありますから、散々じらされて、おおいに不満です。


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