ゆとり社長を教育せよ。
社長室からビルを出るまでの間、サンシャインの社員という社員(洒落じゃないわよ)が、私と加地社長に無遠慮な視線を投げかけてきた。
……それもそのはず。私だって、なんでこんなに強く手首が掴まれているのか、よくわからない。
「……社長。あの、そろそろ手を離していただけませんか?」
サンシャインの正面玄関を出て、空から降り注ぐ秋晴れの眩しさに目を細めながら私は言った。
「あ、ごめんなさい。なんか、無意識につかんじゃってました」
パッと手を離した社長は、今日も社長と言うよりはアイドルかホストかという感じにセットされた無造作ヘアに手を差し込み、照れ笑いする。
その髪型は厳しく指導していつかは短く変えさせたいところだけど、とりあえず、今私が言うことは、これかな……
「あの、ありがとうございました……助けて下さって」
改まって頭を下げる私に、加地社長は柔らかく微笑んで首を横に振る。
「気にしないで下さい。いくらなんでもあれは腹立ちましたもん、俺だって」
「……でも、あんな風に出てきてしまって、今後の取引に影響しないでしょうか?」
あのあと、加地社長は『次の予定がありますのでこれで失礼します』と言って、その場を取り繕うこともせずにあそこから出てしまったから……
助けてもらったのはありがたいけれど、仕事のことを考えると、あんな態度でよかったのかと不安になる。
「それで契約切られたとしても、別にいいです。スーパーなら他にもたくさんありますから」
加地社長は、まるで“いいお天気ですね”と言う時のような呑気な口調で言う。
……はあ。この人、やっぱり何もわかってない。