ゆとり社長を教育せよ。
「なんで寝てるのよ……」
簡単なお昼を済ませた後、ノックをしても返事がなかったから勝手に入った社長室。
加地社長は大きな机に突っ伏し、私物らしいパンダのクッションに顔を乗せてどうやら熟睡しているようだった。
腹が立つくらい長い睫毛。無防備に小さく開かれた唇。
その安らかすぎる寝顔に、私は苛立ち以外の何も感じなかった。
こんにゃろ……私がメデューサなら、今すぐ石にしてやりたい。
しかし私の長い黒髪は残念ながら蛇にはならないので、彼の抱き締めるパンダを思いっきり引き抜くという仕打ちで許してあげることにする。
――えいっ。
狙い通り、社長はゴツンと机に額をぶつけ、のろのろとした動作でそこを手でさすりながら目を開いた。
「あ……おはようございます」
「おはようございます、じゃありません! 大事なイベント前に何やってるんですか! ちゃんとお昼は済ませたんですよね?」
「あー、うん。ご飯は、食べました。で、ここへ戻ってきたら、午後のイベント延期の連絡があって……」
「え?」
延期? どうして? 私、そんなの聞いてない。
眉を顰める私に、社長はのんびりとした口調を崩さずに言う。
「出演予定だった俳優さん……高柳さん、でしたっけ。彼の体調が思わしくないらしいです。
俳優さんがいなくても何とかイベントはできますけど、高柳さんの生み出す経済効果を考えると、イベントを彼の出演できる日に変える方が得策だと宣伝部は判断したみたいで」