ゆとり社長を教育せよ。


“頑張ってねー”


と私を送り出した先輩二人は、気の毒そうにしながらも顔が笑ってたから絶対に私の状況を面白がってるに違いない。

あーあ、明日は嫌って言われても二人に愚痴聞いてもらお。


私は化粧も直さず、不機嫌さをあからさまに顔に貼りつけて会社を出る。

すると門の所にいつもいる年配の守衛さんが「なんだか今日は怖い顔だなぁ」なんて余計なことを言うものだから、思わずキッと睨みつけてしまった。


いけないいけない、また鬼って思われたかも。

でも、私がこうなるのも全部、アイツのせいなんだから――――


顔を上げた視線の先に停まるのは、確かにオープンカーではなかった。

そしてまたもや私でも知ってる外国車。

っていうかあの小さくて可愛いフォルム、もしかしてあの三枚目なのにカッコいい大泥棒がいつも乗ってるやつじゃない?

まぁ私は、帽子とヒゲの相棒派だけどね……

しかしいったい車何台持ってるのよ。ゆとりくんのくせに。



「……お待たせしてすみません」



なんて、心にもないことを言ってドアを開けると、それは顔に出ていたらしい。



「すみませんって顔してないですよ。そんなに嫌なんですか? うちに来るの」

「……いやです」

「うわ、直球」



ゆとりくんはクスクス笑いながら、私がシートベルトを締めたのを確認すると、車を発進させる。

私、なんでこの人と二度目のドライブしてるんだろ…… 時間とHPが無駄に減っていく。

私がやる気なく、窓ガラスに頭をコツンともたれさせた時だった。



「そういえば、約束してから思いましたけど、高梨さんて料理下手そう」



社長がにこやかに、そんな爆弾を投下してきた。


どかーん。美也、100のダメージ。

図星だから、きゅうしょにあたった!


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