調導師 ~眠りし龍の嘆き~
‡〜闇の正体〜‡

ナイフを叩き落としながら、強引に息を整え今度はこちらから仕掛ける。
男の持つ小刀の切っ先に木刀を勢いよく振り下ろす。
回転して、放物線を描きながら落下していくのを目の端で確認しながら、足払いをかける。
男は予想外の戦法にたたらを踏んで堪え、すかさずナイフを放ってくる。
すんでの所でかわし、反動を利用して腹を蹴り飛ばす。

「っうっ…っく」

まともに入った蹴りは、男に膝を着かせるのに充分な威力だった。
距離を取り、隙を与えないように油断なく木刀を構える。

「はぁ…っ話す気にっなったか?」
「くぅっ…っ」
「殺し屋っなぜ私を狙うッ」
「…邪魔らしい」

ようやっと言葉を発した男は、息を整えながら話し始める。

「消して来いと言われたから俺が来た…」
「誰に言われた」
「…宝堂…」
「っあそことは縁を切った。もう何の関わりもないはずだッ」
「知らんッ…俺は命令を聞いただけだ…」
「帰って伝えなさい。
今度またこうして私や……祖父母、私が大切に思っている人達に危害を加えるようなことがあれば、それなりの報復を覚悟するようにとッ…」
「……」

もはや戦意を絶たれた男に、吐き捨てるように告げ、痛む肩を押さえながら後ろも見ずに帰途に着いた。

「ただいま」
「「おかえりっ」」
「美南都ちゃんッ?
何て怪我!!」

血相を変えて駆け寄ってくる祖父母に、家には何も変わった事がないことを確信する。

「良かった…」
「美南都ちゃんっ」
「美南都っ」

張り詰めていたものが解け、安堵すると、ふっと意識が飛ぶのを感じた。
遠くで名前を呼ぶ祖父母の声を聞きながら、そのまま廊下で昏倒したのだった。



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