調導師 ~眠りし龍の嘆き~
第十章 想いは深く
‡〜闇の足音〜‡

「あの刀を止めるには、どうしたらいいんだ?」

秦は、私が落ち着いてきたところで、静かに問いかけてきた。

「…龍牙刀は、完全に封じを解かれてる。
本来、龍牙刀と水薙刀は二本で一つの刀。
陰の性質を持つ龍牙刀は、長い間穢れを受け続けた。
更に、不安定な封印の為に波調が乱れ、正気をなくしている…。
だから、陽の性質を持つ水薙刀と刃を合わせることで、本来の破調を取り戻すことができる」



《ふぅぉ…ぉぅ…》



近づいてくる龍牙刀の乱れた破調に呼応するように水薙刀が奏でる。

「来る…」

立ち上がり、階段の上を凝視する。


ズズッ。

ズガガッ。


振動と共に、階段の上から巻き上がった乱風が社を吹き飛ばす。
上にあった社は跡形もなく吹き飛び、どんよりとした空が口を開ける。


〈ひひゃはっ
ひひひっ〉


地上へと続く階段を残して、吹き飛ばした龍牙刀は、当主の身体を操り、こちらへ飛び降りる。

「秦っ!!」

素早く水薙刀を抜き構えた秦は、降り立った当主に一気に切りかかる。

「はぁっ!」

気合と共に振り下ろされた刀は、人間とは思えない奇妙な動きでかわされ、今度は秦に切りかかってくる。

「っくっ…」

ぎりぎりのところで避け、龍牙刀めがけて刀を叩きつける。
しかし、またもや避けられた刀は、空しく空を切った。



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