調導師 ~眠りし龍の嘆き~
エピローグ
‡〜あれから〜‡

龍牙刀の事件から、一ヶ月が経とうとしていた。
あれから、当主を始めとする一族の人々は、復興に向けてゆっくりと歩み始めている。
私は、父や他の犠牲者達を供養した後、全てを終えて家へと帰ってきた。
そして、部屋に着いた途端、気絶するように眠りに着いた。
それから一週間、私は半ば昏睡状態に陥った。
葬儀の間中、一睡もしなかった事。
仮とはいえ死にかけた事。
葬儀の後、地下に眠っていた多くの刀の調導を行った事。
さまざまな要素が原因だった。


ぴぴぴっぴぴっ。
メールの着信音が聞こえ、携帯を見る。


[二時に診療所に行く]



そっけないメールに苦笑しつつ、時間を確認する。



[了解◎]


返信して、部屋から出る。
まっすぐ仏壇の前へ。

「行ってまいります」

丁寧に手を合わせて挨拶。
脇に置かれた青龍を一瞥して、玄関へ。
あれから青龍を持ち帰って、仏壇の横に置いた。
側に置いて欲しいと言う願い通りに保管している。
気を乱すこともなく、美しい調べと共に浄化してくれている。

「美南都ちゃん。
あんまりはしゃぎ過ぎちゃ駄目よ。
まだ本調子じゃないでしょ?」
「もう平気だよ。
大丈夫。
診療所で診察してから出かけるしね」

倒れてから、祖父母の心配性が一段と酷くなった気がする。
自業自得とは言え、そろそろ辛い。

「気をつけて行って来いよ」
「はい。
行ってまいりま~す」
「「いってらっしゃい」」

昏睡していた間、秦と先生、慎太郎までもが毎日交代で様子を見に来てくれた。
祖父母は、目覚めない私に生きた心地がしなかったとあれから何度も言う。
ほとんど寝ずに様子を見てくれていたようだ。



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