私んちの婚約者
彼が金髪を揺らして、私の顔を覗き込む。

「マリアに聞いてた通り、君すごく可愛いね」

レオのこの一言で、一気に私の彼への評価は“胡散臭い”になった。
だってマリアが私を可愛いなんて褒めるワケがないもん。

「何企んでんの?」

じとっと彼を見据えて聞けば、レオは苦笑した。

「えぇ、ひどいな。ただ君と仲良くなりたいだけだよ」

胡散臭いことこの上ない!
その指が私の頬に伸びる。

「アズサ、チーズついてる」

触れようとした、瞬間。
レオの手を払うように、私と彼との間に立ちふさがった、背中。


「……愁也」

「何してんの」


おぉ~王子様登場だ。
タイミングばっちり。

「ただの業務連絡」

「……つまり口説かれていたと」

う。このパターンは知ってるような。
愁也はチラリと私を見て、レオに向き直る。

「レイ・エ・ラ・ミア・フィダンツァータ」

鋭く響く声で、愁也が言った。
レオが軽く目を見開いてーーそれからクスリと笑った。

「どゆ意味?」

きょとん。

「“彼女は俺の、婚約者”ってさ。……シューヤは意外に独占欲が強いんだね」

レオが言う。
優雅に笑うけど、なんだか馬鹿にしてるように見えるのは私だけ?

つまりは。

「あんた感じ悪い!!」


ビシイィッと指を指して言い放てば、レオは私を面白そうに眺めた。

「アズサ、やっぱり君可愛いよ。障害あるなら特に燃えるなあ」

その言葉に、愁也が眉を上げるのを視界にとらえて、私は息を呑む。


マズい、マズい!
社内抗争、国際問題、暴力事件になるぅう!!
< 167 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop