私んちの婚約者
***
「それじゃあ行くよ、ワトソン君」

「それあんたがホームズなの!?この場合、逆でしょ。主役気取りか、この野郎。しかもイギリスの話じゃん!」

「細かいことはどうでも良いのだよ、スカリー君」

「それはアメリカだし、だいいち愁也は異星人じゃない!!」

「よし、補佐しろ、クロエ」

「……あんたのエンタメ知識、微妙に古いわよ」

やたら海外のエンターテイメントに詳しいな、こいつ!!実はオタクか!?


レオと私は愁也の後を追って、街中を歩いていた。
彼は始終ふざけてるし、私はイライラとあしらっていて、到底尾行してるなんて緊張感が無い。
よく愁也に気付かれないもんだと思う。

そうしてぎゃあぎゃあ歩きながら、気がつけば見たことのある場所に来ていた。

「あ、ここ」


こっちに着いた当日に、愁也と歩いた場所だ。

ああ、やっぱりあのジェラートも食べときゃ良かったあ~

「アズサ、そんなとこ見てていいわけ?」

レオが呆れて私を引っ張る。

「ほら、あれ」


ーーあれ?


愁也が通りを渡って、軽く手をふった。

その店の前に、一人の女性が立っていて、愁也を見て手を振り返す。


ドックン、と心臓が盛大な音を立てた。


……愁也の待ち合わせの相手は。

黒髪の、イタリア人女性。目元が色っぽい、すごい美人。
愁也を見て、ニッコリと微笑む。

二人の楽しげな様子は、どう見てもビジネスではなく、親しい間柄だとすぐに分かった。


……嘘、でしょう?
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