隣のチャラ男くん
焦げたホットケーキに始まり、そう言えばいろいろあのころから作ってくれていたような。

けれど果してそれは、そんな自分の我儘だけでやってくれるものなのか。


「慎吾」

ぼそりと呟くように呼んだ名前に、慎吾が顔を上げた。

「なに、しろ」

「あんた、かなみに手ぇ出したら、おばさんに乱交しまくってるってチクるからね」

瞬間、かろうじて美形に範疇されるだろう顔を、慎吾が盛大にゆがめた。

「なっ……、もう、……やだおまえ」

有り得ない、信じらんないと今度はへにょんと机に突っ伏した幼馴染に、真白は鼻を鳴らした。

「真白と同じDNAだとは思えない」と周囲から言わしめるかなみはかわいいかわいい自慢の妹だ。こんな手当たり次第に盛りまくってる変態にやる謂れはない。一切ない。


「……俺の愛が通じてない」

「はぁ? そりゃあんたがかなみに惚れんのも分かんなくはないけども」

「いやそこじゃないから」


げんなりチャラついた前髪をかきあげて、何故か「しょうがない」とでも言いたげに慎吾が苦笑した。

< 12 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop