愛されオーラに包まれて
「接客に長けているあなたなら、どのような言葉を使うと相手が傷つくかくらい、判断できるはずでしょう」
『高松さんが、告げ口をしたのでしょうか。ただの同級生同士の会話を』

告げ口か。
神戸さんがそう邪推するとはな。

「高松は、自分からは何も言っていません。ですが、デモ販の後から、明らかに様子がおかしかったのと、花村があなたが高松に小声で伝えた言葉の中で、先程の"偽善者"という部分だけが、耳に入ってきたそうです」

神戸さんは黙ったまま下を向いた。

俺は言葉を続ける。

「上司である僕は、高松の変化に気付いてデモ販の時の出来事を話してもらったら、神戸さんとのことが浮上した。最初の質問に戻ります。なぜあのような言葉を高松に言ったのですか?」

神戸さんは少し背中を丸めて、両腕を自分の膝に乗せた。

ちなみに神戸さんはパンツスタイルのスーツを着ている。

『悔しいですね。出来る女は最後まで出来る。高松さんへのただの僻みです』
「あなたが僻む必要なんてないように思えますけど」

神戸さんだって十分出来る女。
高松の方がむしろまだ未熟だ。
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