愛されオーラに包まれて
『桐生さんと、ふたりで話せる空間に行けば、きっと話せます』

え?

俺は…やっぱり驚くよ、高松。

でも、それは、多分俺が高松の心を取り込める、或いは取り戻せるチャンスを高松が与えてくれたのかも知れない。

なので俺は従業員を呼び、今から客室を押さえられる部屋がないかを確認してもらうようお願いした。

返事待ちの間にデザートが来る。

『今、ホテルの人と何を話していたんですか?』

あ、聞こえてなかったか。
まぁ、いいか。

「お前の心配することじゃないよ」

高松は俺の言葉に不満だったようで、むくれた表情をした。
でも、その顔でさえ、俺は…

従業員が来た。

スタンダードは満室だが、エグゼクティブなら空室があるとのこと。
迷わず俺は、エグゼクティブを押さえるよう指示した。

では、こちらに…と、宿泊カードを従業員が出してきたことで、高松は気がついた。

『ここに、泊まるんですね』
「あぁ、お前もな」
『分かってます』

俺の言葉に被せるように高松は言った。

「行くぞ」

部屋のカードキーを受け取った俺は、高松と、部屋のある22階に向かった。
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