学園物語

5

あの後ホームルームとなり、クラス担任が教室に入ると騒がしかった声が一斉にやんだ。
怜を褒めているつもりだが精神的ダメージを与えていた奴らも散り散りになる。
刃も身体を前に向け、話に耳を傾けるという姿勢だけは見せた。
「これから君たちの担任となる霧島だ!宜しく頼む」
威勢が良い声にがたいの大きい体格。しかも熱血そうなタイプ。
刃の前に座る野球人は嬉しそうに目をキラキラして見ている事だろう。
しかし、刃はこういったタイプが苦手であった。
どちらかといえばマイペースな刃にとって、熱血というタイプは行動を制限してくる邪魔もの。
一緒にやろうぜ!なんて言っては自分の時間を奪っていく。
個性的で問題がありふれたクラスにこの霧島とかいう担任。
しかしあまり物事を深く考える事の出来ない頭の持ち主の刃である。
まぁ毎日退屈しないで済みそうだ、と自己完結する事にした。
「よし!それじゃあ今からグラウンドに集合だ!みんな走れ!!」
何の前触れもなく霧島先生はハハハと豪快な笑い声を上げて教室から飛び出して行く。
一体何が起こった?と疑問に思い固まるも、条件反射でほとんどの生徒が同じく教室を飛び出す。
何故か嬉しそうに声を上げ走り去る生徒もいた。
これか某ドラマのワンシーンでも見ているのだろうか。
ほとんどの生徒がいなくなっても、刃は動けずにいた。
「な…なんなん、コレ?」
唖然とするしかなかった。
少し埃の舞う教室で、今目の前で起こった光景に答えが出ずにいた。
繰り返すが、物事も深く考える事の出来ない頭の持ち主の刃である。
今の光景で思考回路はパニック状態であった。
「集合写真でも撮りに行ったんじゃないッすか?」
「おま…冷静やなぁー。」
「冷静というか、しおりにそう書いてあるから」
いきなりで驚きはしたけど。と怜は付け足しゆっくりと立ち上がる。
その動作すら女子力高く見えるのだから、末恐ろしい。
「ん?行かないんッすか?」
「・・・あ!!あかん!!卒業写真の右側で笑顔の人になってまう!!」
「え、なにそれ?って引っ張るな!!」
きっと待っていてくれたであろう怜の腕をグイグイと引っ張り、慌てて教室を出る。
急がなくても入学式に出ているハズの生徒がいない間に撮影は行わないだろうが。
苦笑いを浮かべる怜と共に校内を走りグラウンドへと向かった。
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