学園物語

4

「先程は失礼いたしました」
「いや、別に・・・いいッすけど」
刃は目の前に座る人物に深々と頭を下げる。
人物の正体は、式の間にお世話になった女子力男子こと妃月怜であった。
怜は式が終わった後、近くにいた先生に捕まり機材などを運ぶ手伝いをさせられていた為に、あの場に残っていたのだとか。
入学式に手伝いとか不運だったなと言うと、もう慣れたと当たり前だと言わんばかりの返答がきた。
「いや、聞いた声やなぁとは思ったんよ?せやけど頭ん中はおかんの笑顔が溢れてて」
「もういいって。気にしてないから」
怜は呆れたようにふぅーっと息を吐きながら、前髪をクシャとかけあげた。
二人はあの後、手伝いを強要した教師により無事教室まで送り届けられた。
その道中に刃は怒涛の質問攻撃。
なんでまだ残ってたん?なんで目の色青いん?コンタクト?ってか綺麗な顔してんなぁー。
右から左へと言葉を流しつつ、怜は適当に返事をしておいた。
そして教室についてからもそれは続いた。
入学式での順番で席が決められていた為、野球人→刃→怜という席順になっていた。
ので、今刃は自身の席に着きつつ怜に向き直り話し続けているという形だ。
「けどほんまお前ってさぁー」
「ん?」
刃は、怜の少し長めな前髪を軽く上げ、大きな猫目を覗きこむ。
「美人系やなぁー」
「・・・殴るぞ」
“ぞ”の時点で、何故か刃は後頭部に痛みを感じた。ゴツッという音も聞こえた。
目の前で言葉を発していたはずの怜は驚きに目を見開いている。
しかも少し涙目になって前髪を押さえていた。
どうやら後ろからの衝撃を受けた時に思い切り掴んでいた髪を引っ張ってしまったらしい。
何本か手の中でくたりとしている毛が見えた。
「――ッッ!!なんやねー・・・っと」
あとで怜に謝ってと脳内で思いながらも、いきなり後頭部を殴ってきた人物が誰なのか。
刃は驚きとムカツキをそのままの勢いに振り向く。
そこに立っていた人物たちを見て言葉と戦意を失ったわけであるが。
「妃月くんに軽々しく触れてんじゃねぇーよてめぇ!!」
「俺たちの“姫”だぞゴラッ!!」
「美人系だと?!正真正銘美人なんだよ!!!!」
口ぐちに唾をまき散らすように吐き出す言葉の数々。
それら全てが刃に向かって飛ばされているのであるが、見事に突き刺さるのは怜の心。
埋まってしまうのではないかという程机に突っ伏した怜に対して、かける言葉が見当たらなかった
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