学園物語

3

(なんか、バスツアーみたいやな)
ぞろぞろと学生たちが女性に付いていく様が、なんともシュールに見えてくる。
特に一番前を陣取っているメガネ男子君なんかはカメラ持ってガイドに写真ねだるヤツっぽい見た目だ。
必死に女性の後にくっついて、鼻息荒く話しかけている。きっとヲタク。
関西のおばちゃんよろしく団体でぺちゃくちゃ話しながらまったくガイドの話しを聞かない風な奴ら。
自分の可能性を探してこのツアーに応募しました的な孤独なスナフキン感満載なナル男。
個性的な奴らが多いクラスなんだろうなぁーと今見える光景だけでも伝わってくる。
そう思うとなんだか一人面白くなって笑いがこみあげてきた。
必死に堪えている為腹筋が死にそうだ。
一人笑いをこらえてプルプル震えている自分が、今一番おかしなヤツに映っている事など露知らず。
刃はしばらく下を向いたまま笑いが治まるのを待った。
「あぁー死ぬかと…ってあれ?」
気付けば周りには誰もおらず、刃一人取り残されていた。
当然と言えば当然だ。なんせ一人で笑っているヤツに声をかけられる兵はなかなかいない。
「冷たい世の中やで。俺、どこに向かったらいいねん」
刃自身好きでこの高校に入学したわけでもなく。
クラス説明に顔を出さないからって退学になるわけもない。
足先を校門の方に向け一歩踏み出す。よし、帰ろう。
だが、先程みた母親の笑顔が脳裏に浮かぶ。
「絶対に殺される」
「誰に?」
「おかん」
「なんで?」
「なんでって!!お前・・・は・・・誰?」
普通に質問が隣から聞こえたので答えていたが、先程この場には誰もいない事を確認したはず。
意識を脳裏に浮かぶ母親の笑顔から、目の前に立つ人物に向ける。
綺麗な漆黒の髪に不釣り合いなはずなのに、何故か妙にしっくりくるぱっちり猫目碧眼。
すっと通った鼻筋に、白いが健康的な肌。
身長は刃より少し高い、165cm前後。
ぱっとみても綺麗系なのが伝わる。その眩しさに思わず目を覆う。
「う、女神かッ!!」
「はぁッ?!」
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