不稔華
初めて貴方のバイクに乗せて貰った時。
貴方から微かに香るコロンの香り。
私今でも付けてるの。
香る度に貴方の背中越しに見えた景色を思い出す。





貴方は私の手を自分の腰に巻き付かせた。
そして優しく私の手を包んだ。
それから私は男の人の手を見る様になりました。
貴方の手はとても、とても綺麗な手だった。





貴方は私の髪をとかしてくれた。
何度も何度も綺麗な手で私の髪を
撫でてくれた。
私はあんまり心地好くて何時も眠くなっていた。




そんな私を貴方は優しくベッドで寝かせて
髪を撫でた。
私は瞳を閉じて夢を見ていた。
貴方の吐息と優しい手が直ぐ届く所にあったけれど、貴方はそれ以上何もしなかった。
私もそれ以上求めなかった。






瞳を閉じて貴方の側で貴方の夢を見る。
貴方は眠った私を何時までも見つめていてくれた。
風が貴方の香りを私に運んで包んでくれていた。
このまま時間が止まってしまえば良いのに…。





私は時々貴方に我儘を言って困らせた。
私も貴方を試していた。
貴方が私と同じ想いかどうかを知りたくて。
貴方はちょっと困った顔をしていたけれど、最後はやっぱり願いを叶えてくれた。





貴方は何時もどんな気持ちだったのかな?
何故何時も優しくしてくれたのかな?





ウソ。
お互いもう言葉で言わなくても充分知っていた。
でも、言わない。
貴方も言わない。
二人ともズルいのかもしれないね。
肝心な事は二人とも言わない。
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