死が二人を分かつとも

「よっしゃ、抜けましたよ!」

あるのは賛辞。
最善の結果に繋げた。

しかして、視界の端々には化け物がいる。

こんなにいるのに、なんで今まで遭遇しなかったのか。

「ここぞとばかりに集まって、んなに餓えてんなら、自分の頭で球蹴りでもしてりゃあいいでしょうがー!」

こっちと誘導するコウモリ。
あてでもあるのかーー私には同じ景色で違いなんか分からないのに、目的地のあるコウモリが“道”を作る。

「お嬢さんの体力も限界でしょうから、逃げるの変更!さっき、木にいた残骸見て思い付きました!」

疲れで倒れる寸前の案。
コウモリの目的地というのは、今の言葉と目の前にある大木で察せた。

他の木とは明らかに違う太さ。
私の何倍も太い横幅に、“見上げてしまうような高さ”の木。

枯れ木の寄せ集め、塵も積もれば何とやらに相応しい立派な木にーー

「わた、し、木登り、したこと、ない」

呼吸を整えるのに必死で、声が掠れる。
それでもコウモリは、出来ないという意思表示を汲み取ってくれた。

「出来ます!出来なきゃあいつらの玩具にされますよ!」

汲み取った上で無理強いをしてくる。

袖を噛まれ、上へ上へと急かしてさえも来た。

今まで走って来て分かったけど、どの化け物も動きは遅かった。少し休んでまた逃げれば、それで十分じゃないのか。逆にこの木に登って、逃げ場なくして袋小路状態にでもなったらそれこそ絶対絶命になる。

「みいつけたああぁ!」

それらの考えが吹き飛ぶ声。
はっきりとした口調の主が、見えずとも“近づく声でもうここに来る”と教えてくる。

走っている。力強い足音が聞こえてくる。
徐々に、強くーー

「っ!」

怯えがバネになった。
巻きつくように重なる木の溝に指をかけた。

木登りというよりは、ロッククライミングのイメージ。上部に行くにつれ、幹も細くなっているから傾斜もある。

「難しいと思ってんのは、お嬢さんの頭ん中だけ!やれば、すぐに“こんなもんだ”ですから、もっと早く上がって下さい!」

背中を押された。高くなればなるほど怖くなって来たのに、ひたすらに上を目指せと言われた気がした。

何でこんなことをと涙ぐみそうになるけど、コウモリの渇が、それは事が終わった後だと叱ってくれる。

「よし!お嬢さん、そこの枝にしましょう!ここまで来れば、奴らも上がって来れません!」

手近にあった枝を足場にする。木の幹に捕まったまま下を見れば、こんな高い場所にまで登ったのかと立ち眩みしてしまう。

「いたー!みつけたよー!イヒャヒャ!」


落ちなかったのは、木の根元に体当たりする化け物がいたから。

走ってきたはいいが、止まれずに衝突。衝突した衝撃で鼻が陥没したのに、化け物は私を見上げ続けている。

「おりてきなよー!ねえ、おりてきなー!おりてきてー!ねえ、おりてきなさいー!おりてこい、おりてこいよー!おりろってー、おりろっていってんだろうがあぁ!」

ガンガンと拳を打ちつける化け物。指がひしゃげて、骨が砕けて飛び散っても、わめき散らして同じことを繰り返す。

「登って来ないの……」

「あの残骸はそこいらのに比べれば、まだ腐ってはいませんが、『登る』と思いつくほど頭はピチピチじゃないです。仮に思いついても、あの手じゃ無理でしょ。飽きて行くまで、もしくは他の死人(獲物)見つけてそっちに行くまで、ここで絶えますよ」

「どれぐらい……?」

「えっ、ええーと。あいつらが行くまでです」

気が遠くなるほど待つようだ。

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