愛を欲しがる優しい獣
「私、鈴木くんに甘えていたの。鈴木くんが優しかったから、何も言わずこのままずっと一緒に居られるような気がしていたの。そんな都合の良いことできるわけないのに……」
鈴木くんの気持ちには応えられない。きっとまた同じことを繰り返してしまうから。
「もう……終わりにするわ」
「姉さん、それってどういう意味……」
「待って、佐藤さん」
早苗の他に、もうひとつ別の声がして思わず振り向く。
「鈴木くん……?」
台所から鈴木くんと、部屋にいるはずの櫂が現れたのだ。
私は椅子から立ち上がって身構えた。