愛を欲しがる優しい獣
「佐藤さんは俺のことが嫌い?」
私は首を横に振った。嫌いであるはずがない。嫌いになれたらどんなに楽だっただろう。
「じゃあ、好き?」
そう問いかけられて、答えに詰まる。
鈴木くんのことは好きだ。でも、それはきっと鈴木くんの求めている“好き”とは違う。
私はもう二度と誰かを傷つけたくなかった。
「ごめんなさい」
涙が頬を伝う。あれほど泣いたというのに、涙が枯れ果てることはなかった。
「ごめんなさい」
応えられなくてごめんなさい。失望させてごめんなさい。
ひたすら謝ることしかできない私を鈴木くんは優しく抱き寄せた。
「謝らないで。佐藤さん」
鈴木くんはゆっくりと私の頭を撫でた。あまりの優しさに終わりにするという決意も揺らいで縋り付きたくなる。