愛を欲しがる優しい獣
第5章
42話:暗雲
営業部のフロアは月曜の朝だというのに騒然としていた。
あちこちから人が出たり入ったりしているうえに、ひっきりなしに電話がかかってくる。
皆、それぞれのデスクで応対しているが、既に間に合っていない。
月曜の朝がここまで忙しないなんて初めてのことだった。
(何があったんだ……?)
「鈴木!」
渉は出社した俺を見つけるなり、大声で呼び止めた。
「どうしたんだよ、この騒ぎ……」
「監査だ」
「監査?どうして……」
監査は通常、1~2年に一度、不定期で行われる。書類の内容に不備がないか、資金運用に不正がないか、1週間にわたって本社から派遣された監査部から調査を受けるのだ。
確か半年ほど前にうちの営業部も監査を受けたばかりだ。
どうしてこんなに短期間で2度の監査を受けることになったのだろう。
渉は人目を気にするように声を低くして、俺の疑問に答えた。