愛を欲しがる優しい獣
「とにかく、お前も手伝えよ。朝から電話が鳴りっぱなしだぞ」
「ああ」
事実確認を求める電話と、噂を聞きつけた営業先からの問い合わせで営業部はパニックになっている。
渉の言う通り、適当なデスクに座って電話を取ろうとすると、目の前に立っている人物が制止を求めるように手を受話器の上に置いた。
「鈴木貴士さんですね」
監査部と書かれた腕章が嫌でも目に入る。
……嫌な予感がする。
「第二会議室に来てもらえますか?」