愛を欲しがる優しい獣
鈴木くんはどんな想いをしているのだろうか。心細くないだろうか。
(無力だわ……)
力になりたいのに力になれないもどかしさを痛感して、役立たずな自分をなじりたくなる。
私はおもむろに椅子から立ち上がると、冷蔵庫の余りものをタッパーに詰め始めた。
炊き上がったばかりのご飯は食べやすいように小さくおにぎりにして、先ほどのタッパーと保冷剤と一緒にバッグに入れる。
「ちょっと出かけてくるね。夕飯は先に食べていて」
早苗にそう言い残すと、私は家を飛び出した。
(逢いたい)
……どうしても逢わなければいけない。
そうでないと、彼はこのままどこか遠い所に行ってしまうような気がした。