愛を欲しがる優しい獣

44話:悪夢


昔からつくづくそういう役回りだった。

<鈴木ってマジで便利だよな。あいつと一緒にいるだけで教師からの評価も上がるし>

どっと沸く、あざけるような笑い声が、耳の奥底にこびりついて離れなかった。

放課後の教室に集まっていたのは、いつも一緒に行動したクラスメート達で。

(内緒話なら他所でやればいいのに)

……普段と唯一違う点は、その場に俺の姿がないということだけだった。

俺は机の中に忘れてきたノートを取りに行くのを諦めて、靴箱へと引き返した。

彼らが俺を都合よく利用しているのは知っていた。

今更、傷ついたりするものか。

他人から便利に扱われるのには慣れている。

ほら、優等生面だってお手の物だろう?

利用するだけ利用して要らなくなったら捨てれば良い。

……所詮、俺にはそれだけの価値しかないのだから。

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