愛を欲しがる優しい獣
「もう!知らないんだから……」
私はトイストアから出ると顔を膨らませて鈴木くんを睨んだ。
櫂や早苗はともかく、恵や陽はひろむが買ってもらったおもちゃを見れば、絶対に自分も、自分も、と強請り始めるに決まっている。
今だって、家には鈴木くんからもらった本やゲームが溢れかえっているというのに。
「皆にもちゃんと買うから。もちろん、佐藤さんにも」
鈴木くんは私が持っていたトイストアの買い物袋を受け取りながら問いかけた。
「佐藤さんは何が欲しい?」
「私にもくれるの?」
「もちろん。皆より奮発するよ」
「贔屓だわ」
「贔屓ぐらいするよ。彼女ですから」
鈴木くんはごく自然に私の手を取ると、休日で混雑している人ごみの中へと歩き出した。
一歩遅れて後ろを歩く私は、彼の言葉の意味を考える。
欲しいものは確かにあったのだけれど、きっと鈴木くんの言っている“欲しい物”は、彼女が彼氏に強請るような類のものを答えとして期待している。
改めて意識するとくすぐったい気持ちになった。
(……何も要らないわ)
私は鈴木くんの背中に向かって先ほどの問いの答えを返した。
……もう、望む物は手に入っているのだから。