愛を欲しがる優しい獣

「本当にやってるね……」

グラウンドでは紺色のユニフォームを着たチームと黄色のユニフォームを着たチームが、互いのゴールネットを揺らそうと熾烈な争いが繰り広げられていた。

「櫂兄さんはどこ?」

恵ちゃんは背伸びをして、懸命に櫂くんの姿を探していた。

グラウンドを囲うように設置された金網型のフェンスの前には、保護者の皆さまが群れをなしていて、己の息子に思い思いの声援を送っていた。

とてもじゃないが割って入れるような雰囲気ではない。

俺は恵ちゃんの脇の部分に手を差し入れると、一気に抱き上げて肩に乗せてあげた。

わあっとはしゃぐ恵ちゃんにも分かるようにグラウンドの一点を指差す。

「ほら、あの“10”って書いてある紺色のユニフォームを着ているのがお兄ちゃんだよ」

事前に佐藤さんに背番号を聞いておいて良かったと思う。遠目から見ると、どの男の子も同じように見えた。

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