愛を欲しがる優しい獣
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「お腹いっぱい。もう動けない……」
佐藤さんはお腹を押さえながら、カーペットの上に仰向けに寝そべった。
家に帰ってきてから、ずっと苦しそうにカーペットの上を右へ左へとごろごろしている。
(珍しいこともあるもんだな……)
家にいる時の佐藤さんはいつも忙しなく働いていて、だらしなくただ寝転がっている姿なんて見たことがなかったのだ。
「お茶でも飲む?淹れるよ」
「もらう……」
俺はやかんをコンロの上に置いて火を点けた。
お湯が沸くまで怠け者になった佐藤さんを観察することを心に決める。
佐藤さんは幸せそうにお腹を撫でた。
「調子に乗って食べ過ぎちゃったみたい……。全身ケーキになった気分だわ」
「本当だ。甘い匂いがする」
からかうようにくんくんと鼻を鳴らせば、彼女からくすくすと笑みが漏れる。