愛を欲しがる優しい獣
彼女を改めて見ると、佐藤さんの言っていたことが誇張ではないことがわかった。
その道に進んだほうが良いのではと思わずにいられないほどの容姿である。
……少なくとも、一人のバカな男を惑わす魅力はあった。
いつもなら放っておく所だが、佐藤さんの後輩なら助けないといけないだろう。
俺は仕方なく居心地の良かった柱の陰から離れると、真っ直ぐ彼らの元へと歩き出した。
「関谷さん」
声を掛けると関谷さんが弾かれたように顔を上げた。
俺は新人の方を見て言った。
「ごめんね、関谷さんに用があるんだけど」
新人は悔しそうに歯ぎしりして、その場を立ち去っていた。
(ちょろいな)
俺に敵意を剥き出しにしても、どうにもならないだろうに。