愛を欲しがる優しい獣

「なんであんなに美味しいんでしょうね、甘い物って」

関谷さんは悩ましげに言った。

発起人である彼女が一番熱心にケーキを口に運んでいたのは意外だった。

今度、スタイルを保つ秘訣を窺ってみたい。

「それは、女性が甘い物で出来ているからでしょうな」

椿はひっと悲鳴を上げた。

「初めまして。渡辺と佐藤の同期の佐伯です」

佐伯くんはどこからやってきたのか、いつの間にか椿の隣にちゃっかり座っていた。

「彼女が噂の関谷さん?」

佐伯くんは実に嘘くさい紳士面を顔に張り付けて関谷さんに問いかけた。

椿が警戒するようにテーブルに身を乗り出す。

「ダメよ、関谷さん!この男はね、性別がメスなら誰でも良いっていう女の敵みたいな奴なんだから!」

……その評価は当たらずとも遠からずといったところか。

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