愛を欲しがる優しい獣
「鈴木くんも、佐伯くんも忙しないわね」
佐伯くんが社食に居たのは、ほんの数分だった。
「もうすぐ、年末だからね。営業部も忙しんでしょうよ」
椿は佐伯くんが置いていった食器類を自分のものと一緒にひとつに纏めた。
なんだかんだ言って後始末までしてあげるのは、椿の面倒見が良いからか。はたまた別の理由があるからなのか。
「そう言えば、関谷さんって鈴木くんと知り合いだったの?」
「……この間、困っていたところを助けてもらったんです」
ほんのりと頬を赤く染めて答える関谷さんを見て。
……胸騒ぎがした。
「もっと冷たい人かなって思っていたら意外と優しくて……私……」
口を噤んだ彼女の言葉の続きを予想するのは容易いことだった。