愛を欲しがる優しい獣
「だから言ったでしょう?“佐藤さんが思っているほど紳士じゃない”って」
そう言って、彼は己の唇をペロリと舌で舐めた。
ぞくりと背筋が粟立つ。
これが小林さんの言っていた目的のためなら手段を選ばない、彼の本当の姿なのだと悟る。
「俺に惚れられたのが運のツキだったね、佐藤さん」
抵抗しようとしても無駄だった。私は既に彼の仕掛けた甘い罠にかかっている。
決して抜けられない優しさという名の包囲網に。
鈴木くんは呆然としている私の顔を覗き込んで……微笑んだ。
「選んで。俺か、俺以外の男か」
羊の皮を被っていた獣は正体を現した。
そして。
……獲物は私。