愛を欲しがる優しい獣
「……まるで鈴木と亜由姉さんみたいだよね」
櫂は最後にそう言って締めくくると、再びテレビの画面に目を向けた。
「最近の中学生はすごいことを考え付くもんだな」
樹は感心したように櫂の頭をよしよしと、ぐしゃぐしゃに掻きまわした。
「でも、櫂の言う通りだ。鈴木はずっと姉ちゃんの背中を見ていたよ。姉ちゃんが振り返ってくれるのをずっと待っていた」
樹は台所に立っていた私に向かって言った。
「姉ちゃんはこのままで良いの?ずっと背中を向けていれば傷つかなくて済むけど、幸せだって訪れないんだぜ。もうちょっと素直になったら?」
「素直になったって、上手く行く場合ばかりじゃないでしょう?」
物語がすべてハッピーエンドで終わるとは限らない。何も知らない子供のように無邪気に信じるには、私は歳をとり過ぎていた。