愛を欲しがる優しい獣

12話:もやもや②


「最近、楽しそうだな」

「え、そうか?」

「毎日のようにニヤニヤしている」

同僚の渉の言葉に思い当たる節がないわけではない。

数日おきに彼女の家を訪問しては、子供たちと遊んで手料理をご馳走になっている。楽しくないはずがない。それがつい表情に出てしまっているようだ。

「わかるか?」

「上手くやっているのか?例の“サイトウ”さんと」

「“サトウ”だよ」

渡すつもりだったプレゼン資料を顔に押し付けてやると、渉はさして気にせず飄々と受け取った。

「その調子で明日のプレゼンも上手くやれよ」

「わかってるよ」

プレゼンの準備は完璧。後は本番を待つのみ。

きっと今回も上手く行くだろう。渉と組んだ仕事で契約を取れなかった案件はない。

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