愛を欲しがる優しい獣

ふうっと人知れずため息が漏れる。

佐藤さんの心を掴む方がよっぽど難しい。

格好つけようとしてもオタクな趣味もプライベートの地味な装いもばれてしまった。取り繕うとしたところで既に遅い。

佐藤さんに関することに対しては本当に詰めが甘いなと自虐的な笑みが湧く。

正直なところ、佐藤さんは俺のことをどう思っているのだろうか。

佐藤さんは何も言わない。

そして俺も尋ねない。

(佐藤さんは忘れているのかもしれない。……俺が告白したことなんて)

何だか胸の奥がもやもやしてくる。

最悪だ。これではまるで覚えていて欲しいみたいではないか。

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