愛を欲しがる優しい獣
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「うわあ!サクランボだ!」
佐藤さんは包みを開けた瞬間、歓喜の声を上げた。
「サクランボ好きなの?」
「うん!嬉しい!」
本当に嬉しそうな彼女の顔を見て、俺も思わず笑みがこぼれる。
手ぶらで来るのも悪いと思って毎回手土産を持参するが、今までこれほど喜ばれたことがあっただろうか。
佐藤さんはサクランボの包みを持って、台所に走っていった。
君の好きなものがまたひとつ頭にインプットされていく。
ああ、願わくば彼女の喜ぶ声をずっと聞いていたい。
……でも、この空間を愛おしいと思う限り欲張ってはいけないのだ。