愛を欲しがる優しい獣
23話:食器
「ごめんなさい……」
ひろむは泣きながら私のつけているエプロンに顔を埋めた。
陶器の砕ける破裂音がした時には既に遅かった。
この頃、陽や恵の真似をして進んでお手伝いをしたがるひろむに食器を拭くように頼んだのは私だった。
最初は張り切って手伝っていたのだが、途中で集中力が途切れてしまったか手元がお留守になってしまったようだ。
「落としたものは仕方ないわ。あとはお姉ちゃんが片付けておくわね」
物置からほうきと塵取りを持ってきて、床を掃いている最中にようやく気が付く。
ひろむが割ったのは鈴木くんが来るときにいつも使っていた茶碗だった。