ストーンメルテッド ~失われた力~
夕方になり、子供達は逃げる様に自宅へと帰っていった。
それにも関わらず、未だに、あの嫌味たっぷりな悲痛の歌が彼女の耳から離れない。
彼女は、一人、分厚い本を閉じると石から立ち上がった。
そうして、自宅へ帰ると......引き攣った目に真っ白な肌が印象的な夜の女神の母親のニュクスは冷たい視線でジュノを見る。
相変わらずに、服は黒ずくめのドレスに身を包んでいた。
ニュクスは、冷たい視線のまま、口を開き言った。
「こんな時間までどこへ行っていた」
「ごめんなさい」
そう言って、暗くなったジュノは目線を床に向ける。
「......ん?」
その時、ニュクスの目に入ったのはジュノの小さな両手一杯に抱き抱えられた分厚い古い本だった。
「なんだい、その本は......汚い本だね」
母親の、その口調には嫌味を感じた。
「Mr.ハットに......貰ったの」
「ふっ。へー、あんたが......霊神となんかねぇ......」
それは、ジュノを馬鹿にしたような言い方だった。
「アンタみたいに、悪魔見たいな力を秘めた女神なんか、どうせ......その内、だーれも寄り付かつかなくなるさ。......アンタなんて、そういう運命だろう?」
ジュノは、唇を強く噛み締めながら、ニュクスをキッと睨み付けた。
「ふっ。なんだい、その目は......言っておくけど、今夜の晩はパン一切れだよ。さっさと食べて、掃除を済ませたなら、寝床につくように」
そう言うと、ニュクスは自分の寝室に入って行った。