ストーンメルテッド ~失われた力~
そうして、ジュノは言われたとおりに小さな食卓に座ると、目の前にぽつり、置かれた、たった一切れのパンをつまみ上げ、口に運んだ。

「......」

けして、美味しくはない。パンは湿気っていた。それでも、仕方が無いことだった。

父親のクラが病死してからニュクスは、いつも自分の事ばかりで、ジュノの事など何一つとして考えてもいない。しかし、それには、それ相当の理由があった。

ジュノには、元々生まれ持った桁外れの闇の力を秘めていた。その力を父親は褒めてくれていた。しかし、ニュクスや他のダークネスの神々は違った。恐れている。いつも...... クラの言っていた、ジュノの力は《神の神だ》という言葉とは反対した余りにも酷い言葉......彼女の力は《悪魔だ》と口を揃えて言った。

父親が居なくなってから、見る見る内に彼女は不幸になっていった。

ときに、自分の力を攻め......ときに、自分自身を嫌った。

そして......死を考える事も。


......いつまで、こんな日々が続くのだろう?

そんなことを考えながら、ジュノは床の雑巾ふきを始めた。

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