ストーンメルテッド ~失われた力~
ジュノの体は震え上がり、ナキアを見やると同時に、頭の中の色は真っ赤に染まった。

この瞬間、ジュノの何かは、壊れた。

突然、地震が起きたかの様に、汚れと錆びがよく目立つ鉄のテーブルとともに、それによしかかっていたナキアは、向こう側の壁の方まで、一気に押しやられる。

よろめきながら、突然の事に目を見開くナキア。体をふらつかせながらも、ようやく冷静さを取り戻したナキアは、こちらを見やり、ニヤリと笑う。

「さすが、選ばれし女神だな」

ジュノは、瞬き一つせず、キッとナキアを睨んでいた。


もう、憎さしかなかった。

この男のせいで私は......私は、神として非常に好ましくない行いをしてしまっていたのだ。彼女の中で、罪の意識が膨らんだ。

「......記憶を取り戻す薬だよ。これで、自分が何者なのか、何をして来たのか、全て分かっただろう?」

また、ニヤリ、笑った。

この不気味な笑みは、彼女を肌寒くさせる。

携帯電話がブルブルと震動したのを肌に感じ取り、ナキアは、それをジャケットの中から取り出した。

中身を確認すると、彼は思わず舌打ちをした。

「チッ。ヘリオス、見張っていろ」

イラついた顔に成り変わったナキアは、ヘリオスにそう言って、ここから左手にある隣の小さな部屋へと入って行った。
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