ストーンメルテッド ~失われた力~
突然、妙な胸騒ぎがした。この、悪魔にも似た異臭、あの日を思い出させられる、一度、聞けば消して忘れることのない、独特な物音。

それを、一秒もたたぬ間に感じ取ったイヴは、体を起き上がらせると、家から素早く出て行った。

この瞬間、我に返ったエンデュは、体を起こしながら、言う。

「イヴ! 何処へ行く!」

慌ててイヴを追い、彼は家を抜け出した。

どうやら、イヴはそれを察していたようである。イヴは足を止めて、こちらへ首を回し、黙って、見つめていた。

周囲を見渡せば、アムール国であると言うことに疑いが持てるほど、町中は、何者かにより荒らされていた。

あちらこちらの住宅は、めちゃくちゃになっている。窓ガラスは割れ、壁は壊されて、家の中は丸見え状態。

耳を済ませば、あちらこちらにバタバタと羽を鳴らす音が聞こえる。そちらを見やると、その正体を目にしたエンデュは、凍りついた。

......封印の解かれた闇の精霊が再び目覚めたのだ。

ひどい有り様に成り変わった町を、エンデュは眉間にしわを寄せながら見詰めていた。

すると、着いてこいとでも言うように、イヴは歩き出して行った。エンデュは、イヴの背後を歩いて行く。

歩いて行きながら、周囲を見渡す......。

豪快に壊れた家、ぽっきり折れ曲がった、まだ、若い木々や怯えて立ち尽くす神々、立ち向かい全力で自身の持つ力を使うたった数名の神々を......。
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