ストーンメルテッド ~失われた力~
しばらく着いて行くと、名も無き森の中とへ入った。辺りに人影は全くなく正に自然そのものが生きる場所であった。

大自然の中、すんと咲いた小さな花の上には美しく愛らしい花の精霊がちょこんと座っていた所、二人は気付かずに歩いて来てカゲンに踏まれそうになったところ、翼を広げて素早く飛び、再び別の花へと避難して行った。

「最近ね。この当たりに、何物かに貴重な人形草を食い荒らされるダよ。でも、それ......無いと困る。ジュノさんも......困る。闇の精霊の封印に必要な貴重な材料。だから無いと......困る。カゲン、手伝え。探して......採りに行くダ」

「人形草を見つけるのは簡単か?」

「見つける事ワ、そりゃあ簡単よ。けんども、見つけて採るとその人間草を餌とする何物かに攻撃をされて奪われる。それが現実。だから、僕ケルノも手に負えない。だから、カゲン手伝うダよ」

「そそそ、そうなのか......」

怯えた口調でそう言いながら、カゲンはケルノと共に名も無き森の奥深くまで歩いて行く。

「なぁ、ケルノ。その何物って言うのは誰なんだ?」

「凶暴な森の精霊ダよ。優しい森の精霊もいる。でも、人形草を食うのは凶暴な方だけ」

少し歩いた所、ケルノはしゃがみ込み、まさに人の形をした草を採った。

「これ、精霊に見つからない様に用心するダ。じゃないと僕らは終わり」

「んな訳、ないだろう。ケルノ、大丈夫だ。戦いの神の俺がいれば何も起きやしないだろう」

そう言った矢先、例の奴らが大量に牙を向けてやって来た。

体はもちろん小さくて可愛らしい。しかしながら、この森の精霊達には鋭い牙がある。その牙を使って人形草を食い荒らすのだろう。そう思うと、この小さな精霊でもおぞましいものである。

「何だよ。こんな、小さくて可愛い子達じゃないか......」

「よく言うものダ。油断してたら殺される。逃げるダよ」

そう言って、ケルノは猛ダッシュで逃げて行った。彼は見かけによらず、足が異常な程に早かった。

「......ん?」

ふと、左手首に軽く痛みを感じた。見ると森の精霊が、その鋭い牙でカゲンの手首を噛み締めていた。カゲンが右手で払いのけると、直ぐに精霊は離れていった。

「こんな事で、猛ダッシュで逃げる事なのか?」

そう、つい呟いていると、森の精霊達はこちらを目掛けて大量にやって来る。

「こいつは、きりが無い......」

そう言ってカゲンも逃げ出した。
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