檸檬-レモン-
「良かったね!奈々」
「もー…すごい緊張したよ。でも、ありがと」
早苗には、頭が上がらない。
一人じゃ絶対に無理だった。
連絡が来るかは別として、達成感でいっぱいだ。
「こちら、篠崎オーナーからお客様へと…どうぞ、お召し上がりください」
先程のスタッフが、食べ終わった食器を下げた代わりにデザートを運んできた。
「わあ、美味しそう!ありがとうございます」
早苗が、キラキラと瞳を輝かせる。
「いただきます」
お皿に可愛く盛り付けされた、ショートケーキ。
ベリーのソースとチョコレートソースでハートが描かれている。
宝石が散りばめられたみたいに、細かくカットされた色とりどりのフルーツ。
篠崎さんからの、プレゼントだ。
「ん、おいしーい!」
一瞬にして笑顔にしてしまう、篠崎さんのデザート。
料理の力って、すごいな。
つくづくそう思う。
そして、彼に惹かれて温かな気持ちになっている自分が少し好きになれた気がした。
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